スニーカーブームはなぜ終わったのか?

ディレクションとコーディングを担当している、にわかスニーカーファンの井原です。

かつてスニーカーは、アプリで「お祈り」しながら抽選に参加し、落選を繰り返し、二次流通では定価の何十倍もの価格でしか手に入らない、そんな“争奪戦”の商品でした。しかし、2023年ごろからその過熱ぶりは徐々に冷め、今ではかつて夢だったあのスニーカーが、買取王国のようなリユースショップで手の届く価格で販売される光景も珍しくありません。

あれほどまでに人々を熱狂させたスニーカーブームは、なぜ終わりを迎えたのでしょうか?
今回はその背景を、いくつかの要素に分けて整理してみたいと思います。

1・供給過多

プレミアスニーカーが溢れ出した

ブーム当初、スニーカーは「希少性」によって価値を高めていました。ナイキ、アディダス、ニューバランス、各ブランドが限定モデルを連発し、市場の需要に対して供給は極めて少ない状態が続いていました。

しかしブームの加熱とともに、各ブランドは次々とコラボモデルや復刻版をリリースし、供給量は急増。さらに、同型の色違い、仕様違いが短いスパンで発売されるようになり、「限定品」の希少価値は徐々に薄れていきました。

欲しかったあのスニーカーが、気づけば似たデザインのモデルが次々と登場し、「じゃあ急いで買わなくてもいいか」と市場の熱量は自然と低下していったのです。

2・転売市場の崩壊

価格のバブルがはじけた

スニーカーブームを支えていたもう一つの大きな要素が「転売市場」です。

ブームのピーク時には、定価2万円のスニーカーが、二次流通で40万円、50万円といった異常な高値で取引されていました。しかし、前述の供給過多と、転売目的で買い漁った人たちが一斉に市場に放出し始めたことにより、価格は大暴落。

スニーカーを投資目的で買っていた層が市場から撤退し、「スニーカー=儲かる」という構造が崩れたことで、一気に熱が冷めていきました。

3・物価高・円安

消費者の財布が閉じた

2022年頃から日本では物価高が続き、さらに急激な円安が進行しました。

海外ブランドが主流のスニーカーは、仕入れ価格も上昇し、定価そのものが高騰。日常生活にかかる支出も増えたことで、消費者は「本当に欲しいもの以外は手を出さない」という選択をするようになり、趣味に使えるお金が減少しました。

スニーカーは「手に入らないから欲しい」ものから「高すぎて手が出せないもの」になり、一部のマニアを除いて一般層の関心は徐々に離れていきました。

1~3の要因をマーケティングの観点から考える

スニーカーブームの終焉には、需給バランスの崩壊、転売市場の飽和、そして消費者マインドの変化という、マーケティング的に極めて重要な要素が複合的に絡んでいました。

・希少性マーケティングの落とし穴

ブームを加速させた「限定」「抽選販売」などの希少性戦略は、確かに強力です。しかし、供給過多や類似商品の乱発によって簡単に価値が毀損されてしまうというリスクも内包しています。

短期的な売上や話題性を優先しすぎると、ブランド価値の長期的な毀損につながる危険性があることを、この事例は教えてくれています。

・転売依存のリスク

スニーカーブームの背景には、「儲かるから買う」という転売市場の存在が大きく影響していました。
しかし、この消費行動は「ブランドへの愛着」ではなく「経済的インセンティブ」に支えられた不安定なものです。
インセンティブが消えた瞬間、一気に市場は冷え込み、商品が売れなくなるリスクを孕んでいます。

転売プレイヤーに支えられた売上は、本当の顧客資産とは言えない、ということです。

・消費者心理と外部環境の変化

物価高や円安といったマクロ環境は、消費者の「本当に欲しいもの」への基準を大きく変えました。
高価格帯の商品は、日々の生活コストとの天秤にかけられる時代に入っています。

短期的な流行や、「今だけ」の煽り文句に依存した商品は、このような消費マインドの変化に耐えきれません。

スニーカーブームの終焉は、他人事ではありません。
短期的なヒット商品に過度に依存しないこと、外的要因に頼りすぎないこと、顧客の本質的な満足と信頼を積み上げていくことが重要です。

もし御社の商品やサービスが、「今が旬」「限定だから売れる」「投資対象になっている」そんな状態に偏りすぎていないか。
常に点検しながら、長期的に顧客に選ばれる“価値ある商品”を育てていくことこそ、安定した事業の基盤だと改めて感じさせられます。

これを「自分たちの未来にも起こり得ること」と捉え、しっかりと自社に活かしていきたいところです。


発売当時エアマックス狩りなどで、90年代ストリートを彩った革命的スニーカー「エアマックス95 イエローグラデ 」は喉から手が出るほど欲しいのですが、色違いや素材違いの焼きまわしは定期的に発売されてきました。


私の場合は「これじゃないんだよな」と思いながら焼きまわしの購入を見送ってるわけですが、今がブームの真っ最中だとしたら、その焼きまわしにも価値を感じ、スニーカーアプリの抽選にお祈りしながら参加していたと思います。

2025年はエアマックス95発売30周年として「エアマックス95イエローグラデ」が微妙に形を変えて再販されていますが、限定店舗のみで発売といったゲリラ販売が多く、発売を小出しにされています。私はこれを、価値の暴落や転売目的の購入を避けるナイキの新しい販売方法なのかな?と感じています。

大手なのに様々な手法に挑戦している姿は、いかにしてブランドの熱量を長く保ち、適正な価値を守りながら顧客との関係を築いていくかを戦略的に模索しているのだと思います。

とはいえナイキさん、95年から恋焦がれてきたエアマックス95イエローグラデ、転売しませんから私にだけは買わせてください 笑

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